人事労務

建設業者・建築業者への労働者派遣および許可申請について解説

税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

建設業者・建築業者への労働者派遣

労働者派遣事業関係業務取扱要領

労働者派遣法では建設業務への労働者派遣が禁止とされていますが、これは建設業者や建築業者が行う全ての業務に対して労働者派遣を禁止しているというわけではありません。厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」には次のように記載されています。

建設業務は「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更もしくは解体の作業またはこれらの準備の作業にかかわる業務」をいうが、この業務は建設工事の現場において、直接にこれらの作業に従事するものに限られる。したがって、例えば、建設現場の事務職員が行う業務は、これによって法律上当然に適用除外業務に該当するということにならないので留意すること。

土木建築等の工事についての施工管理を作成し、それに基づいて工事の工程管理(スケジュール、施工順序、施工手段等の管理)、品質管理(強度、材料、構造等が設計図書どおりとなっているかの管理)、安全管理(従業員の災害防止、公害防止等)等工事の施工の管理を行ういわゆる施工管理業務は、建設業務に該当せず労働者派遣の対象となるものであるので留意すること。

なお、工程管理、品質管理、安全管理等に遺漏が生ずることのないように、請負業者が工事現場ごとに設置しなければならない専任の主任技術者及び監理技術者については、建設業法の趣旨に鑑み、適切な資格、技術等を有するもの(工事現場に常駐して専らその職務に従事するもので、請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあるものに限る。)を配置することとされていることから、労働者派遣の対象とはならないものとされていることに留意すること。

ポイントとして次の点が挙げられます。

  • 派遣が禁止されているのは、建設現場や建築現場で直接作業に従事する者に限られている。
  • 設計、積算、現場監督、施工管理または現場事務所で事務職員が行う業務へは派遣可能。
    ⇒建設現場や建築現場という高度な危険を伴う場所では、作る、壊すなどの建設業務を行う際の指揮命令を、自社で直接雇用している者以外には行えないということ。
  • 派遣の対象となる者は、事業主に雇用され事業主から賃金を支払われている「労働者」である。 従って個人事業主(一人親方)が自らを派遣労働者として派遣することはできない。

※労働局では現場でのシート掛けや後片付けについても建設業務に該当するとの見解を示しています。そのため現場監督や施工管理業務を行う者を派遣する際はこれらの作業をさせないよう注意が必要となります。

参考:

建設現場で必要な労働者派遣法の知識 (東京労働局作成資料)
建設業者向け労働者派遣法講習会 (東京労働局作成YouTube動画)

建設業法を考慮した上での注意事項

また、建設業法を考慮した上での注意事項としては、次の点が挙げられます。

元請業者及び協力会社が工事現場に配置しなければならない専任の主任技術者や監理技術者は、所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあるものを選ばなければならないため派遣社員からの選任は出来ません。国土交通省総合政策局「監理技術者制度運用マニュアル」内には次のように記載されています。

直接的な雇用関係の考え方

直接的な雇用関係とは、監理技術者等とその所属建設業者との間に第三者の介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金、労働時間、雇用、権利構成)が存在することをいい、資格者証、健康保険被保険者証または市区町村が作成する住民税特別徴収税額通知書等によって建設業者との雇用関係が確認できることが必要です。したがって、在籍出向者、派遣社員については直接的な雇用関係にあるとはいえません。直接的な雇用関係であることを明らかにするため、資格者証には所属建設業者名が記載されています。

恒常的な雇用関係の考え方

恒常的な雇用関係とは、一定の期間にわたり当該建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていることに加え、監理技術者等と所属建設業者が双方の持つ技術力を熟知し、建設業者が責任を持って技術者を工事現場に設置できるとともに、建設業者が組織として有する技術力を、技術者が十分かつ円滑に活用して工事の管理等の業務を行うことができることが必要であり、特に国、地方公共団体等が発注する建設工事「公共工事」において、発注者から直接請け負う建設業者の専任の監理技術者等については、所属建設業者から入札の申込のあった日以前に3ヵ月以上の雇用関係にあることが必要です。恒常的な雇用関係については、資格者証の交付年月日もしくは変更履歴又は健康保険被保険者証の交付年月日等により確認できることが必要です。

元請業者が工事開始後に選任する統括安全衛生責任者について、派遣社員からの選任は出来ないものと考えられます。 統括安全衛生責任者の職務は、様々な協力会社が混在して働くことによって生じる労働災害を防止するための事項を統括管理することであり、選任される者は工事現場における安全衛生管理に関する権限及び責任を有する者でなければなりません。派遣社員に対して工事現場全体の安全衛生に関する一切の権限と責任を持たせることは普通は考えられないことだと言えます。一方で現場代理人を派遣社員から選任することは建設業法上、禁止されていません。

仮に派遣社員が現場代理人と統括安全衛生責任者を兼務している工事現場で重大な労働災害が発生した場合、元請業者は行政による厳しい是正指導を受けることになると考えられます。

派遣社員からの選任 備 考
現場代理人 建設業法では禁止されていない。
公共工事においては、直接的かつ恒常的な雇用関係にあることを必須としている自治体もある。
主任技術者
監理技術者
× 監理技術者制度運用マニュアルにおいて、直接的かつ恒常的な雇用関係にある者からの選任を義務付けている。
統括安全衛生責任者 × 労働安全衛生法では禁止されていないが、元方事業者による建設現場安全管理指針では専属者から選任することを定めている。また、派遣社員からの選任は同法の趣旨に反するため望ましくない。
安全衛生責任者 × 労働安全衛生法では禁止されていないが、派遣社員からの選任は同法の趣旨に反するため望ましくない。
安全衛生推進者 × 労働安全衛生法において、原則、専属者からの選任を義務付けている。

労働者派遣事業の許可申請

平成27年9月30日の法改正により、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別は廃止され、すべての労働者派遣事業は新たな許可基準に基づく許可制となりました。

※以下は主な相違点です。

特定労働者派遣(届出制) 一般労働者派遣(許可制)
派遣労働者の範囲 常用労働者のみ派遣可能 常用労働者とそれ以外の者も派遣可能
更新手続 なし 最初は3年、以後は5年ごと
資産要件 なし あり
事業所の面積要件 なし あり
事業開始までの期間 届出後即日 許可申請後約3ヵ月
派遣元責任者の要件 派遣元責任者講習受講不要
雇用管理経験不要
派遣元責任者講習受講必須
3年以上の雇用管理経験必須
職務代行者の選任 なし あり
収入印紙代 なし あり(1事業所の場合は12万円)
登録免許税 なし あり(9万円)

労働局へ申請するまでの流れ(許可制の労働者派遣事業を始める場合)

※許可申請の流れ(山口労働局のケース)

初期準備

  • 派遣元責任者講習を受講する
  • 定款および商業登記簿の事業目的に「労働者派遣事業」を加える ↓

申請に必要な書類を準備する

提出する書類は労働者派遣事業関係提出書類(東京労働局)等を参照

※建設業の場合、別途、誓約書の添付が必要となります。

本社を管轄する労働局に申請する

本社を管轄する労働局に申請を行います

実地調査

申請日の翌月20日頃をメドに実地調査が行われる・ 労働局の担当者が事業所に訪問した上で、面談スペースや個人情報を保管しているキャビネット、派遣元責任者の席などを確認します。

正式に許可が下りる

許可を受けた日から事業を開始することができます。

派遣元で無期雇用されている施工管理者等を派遣するまでの流れ

派遣社員の受入期間を決める

派遣社員の受入期間を決めます。

派遣元に対して派遣の依頼をする

無期雇用派遣に限ることを前提に労働者派遣契約を締結することを予定している場合は、当該派遣元に対する抵触日通知は不要です(改正労働者派遣法に関するQ&A第2集)。

派遣先と派遣元との間で、労働者派遣基本契約を締結する

同意を得る

  • 派遣元は、派遣する労働者に対して派遣労働者になる旨を明示し、同意を得る
  • 派遣元は、派遣する労働者に対して就業条件を書面にて明示する

通知

派遣元は、派遣先に対して書面の交付等により、派遣する労働者の名前等を通知する

派遣就業の開始

上記手続きを行った後、派遣就業を開始します

秋田税理士事務所グループの社会保険労務士にお任せ頂く際の各種料金

※税別

労働者派遣事業許可申請

150,000円

※申請書類その他添付書類一式の作成および提出代行まで含んだ料金となります。なお、就業規則変更に関する費用は含まれておりません。

※許可申請にあたり一番の悩みどころとなる「キャリアアップに資する教育訓練」の立案は、事業主様と十分に打ち合わせをさせて頂きながら進めていくことになります。

※料金に関しては許可取得後にお支払い頂きます。

※上記費用以外に、収入印紙代120,000円(1事業所のみの場合)と登録免許税90,000円がかかります。

許可取得後の事業報告書類作成・届出

30,000円~

  • 労働者派遣事業報告書(6月1日現在の状況報告)
  • 労働者派遣事業収支決算書/関係派遣先割合派遣割合報告書

派遣関係書類の作成・チェック

作成:50,000円~

(派遣関係書類のチェック:40,000円~)

  • 基本契約書
  • 派遣依頼書
  • 派遣通知書
  • 派遣元管理台帳 等

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