人事労務

「労働者を指揮監督する」とは?雇用と請負の違いを解説

税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

「労働者を指揮監督する」とは?

一人親方の労働者性や偽装請負を見極める上での重要な判断要素となるのが“実質的に労働者を指揮監督しているか否か”です。この「労働者を指揮監督する」という部分の考え方について、厚生労働省「労働者供給事業業務取扱要領」には、次のように記されています。

(職業安定法施行規則第4条第1項第2号についての解釈) 業務取扱要領 P5

「労働者を、指揮監督する」とは、作業に従事する労働者を、請負業者が自己の責任において作業上及び身分上指揮監督することをいう。この場合、請負業者がその被用者をして指揮、監督させる場合も含むもので、作業上の指揮監督とは、仕事の割付け、技術指導、勤惰点検、出来高査定等直接作業の遂行に関連した指揮監督をいう。したがって、請負契約により注文主が請負業者に指示(依頼)を行い、その結果として注文主の意思が間接的に労働者に反映されることは差し支えないが、その注文主の指示(依頼)が実質的に労働者の作業を指揮監督する程度に強くなると請負業者が労働者を指揮監督しているとはいえないことになる。また、身分上とは、労働者の採用、解雇、給与、休日等に関する一般的労務管理をいうものである。

したがって、請負契約により注文主が請負業者に対し労働者の身分上のことについて指示(依頼)をすることをすべて否定するものでないが、注文主が労働者の身分上のことについて実質的に決定力をもつ場合は、請負業者が労働者を指揮監督しているとはいえない。
このように、労働者を指揮監督するとは、単に作業の上だけでなく、一般的な労務管理をも合わせて行っていることを要件とするものである。

ここで、注文主が注意すべきポイントとして次の点が挙げられます。

  • 請負業者(一人親方を含む)に対し注文上の限られた要求または指示の程度を超えないこと
  • 請負業者が有する労働者への指揮監督権について、実質的に制限を加えないこと
  • 請負業者の労働者に対し、直接指揮監督を加えないこと

注文上の限られた要求または指示の程度に関する具体例

参考事例① 藤沢労基署長(大工負傷)事件

横浜地裁H16.3.31 労働判例876号41頁

  • 多数の作業者が関与しても仕上がりが均一になるよう、各部分について、材質、寸法等が細かく決められていたが、工法や作業手順は指定されていなかった
  • 注文主の現場監督から一人親方に対し、工務店が行う検収に合格しやすくなるようにするため、工事部長が作成した「施工上の注意点 気をつけてもらいたい点」と題する書面を配布するなどした

(判決文より抜粋)

「・・原告が、工務店の定めた作業スケジュールに従って作業し、作業内容が区分され、寸法、仕様等についてある程度細かな指示を受けていたことは事実であるが、これらは、本件工事が大規模なもので、多数の業者が出入りすることから定められた、作業者の安全や能率的な作業のため必要不可欠な調整のルールであるか、マンション新築という本件工事の性質上、画一的な仕上がりを求められるために必要な指示であって、その内容が多少細部にわたるとしても、注文主の通常の指示を超える指示命令であると評価することはできない。・・」

参考事例② 労働者性関係事件

労働保険審査会 H12年労第297号

(要旨より抜粋)

「・・E(請求人)は、「作業について、具体的に作業方法などの説明は受けていなかった。担当する作業場所の図面が渡され、図面に基づいて作業をしていた。図面上でわからないことや、作業でわからないことがあれば、注文者や同僚の作業員に聞いていた。」などと申述していることからすると、注文者からは図面の内容以上の具体的な指示はなされていなかったと考えられ、また、指示も図面の内容についての補足的な説明や、図面どおりに仕上がっていない場合の手直しの指示以上の具体的な作業指示があったとは考えられず、本件の手間請け作業に関しては、通常注文者が行う程度を超える具体的な指示があったとは認め難く、指揮監督関係の存在を肯定する要素があるとは言えない。・・」

参考事例③ 労働者資格関係事件

労働保険審査会 H20年労第219号

(要旨より抜粋)

「・・被災者は、身に着ける簡易な工事道具以外は、B社の設備を使用し、被災者一人に作業が任されることはなく、必ずB社の労働者と共同で現場作業が行われていたことからすれば、被災者は、A工業という屋号を名乗ってはいたものの、F工業など他の一人親方とは異なり、勤務場所の選択や仕事の配分を自ら決定できる立場にはなく、一事業者としての性格を有していたものとは認められない。また、本件事故の被災状況についても、B社が述べているような作業分担や打合せをした手順などは確認できないことからすれば、発注者が通常行う程度の指示というものではなく、B社の労働者と同様の立場で作業が行われた結果、被災したものと認められる。・・」

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税理士 / 坂根 崇真(秋田税理士事務所)

【肩書】 秋田税理士事務所 代表税理士、㈳全国第三者承継推進協会 理事、㈱坂根ホールディングス代表取締役 【著書】 会社を立ち上げる方法と7つの注意点 相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本 (出版社:秀和システム) 【メディア実績】 Yahoo!ニュース、livedoor ニュース、Smart News、幻冬舎GOLD ONLINE 、現代ビジネス ほか

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